書類を前に羽根ペンを持ち、真剣な表情で向かい合うダリウスとカシウス

香誓戯作|異譚

亡き妻そっくりの女主人公が、
国王自身をモデルにした
男主人公に惹かれている。
四十五歳の長官は、恋敵を
遠征・負傷・政変へ送ることにした――
接吻は聞いていない!

イケオジ小説コンテストに応募したら、
国王の書いた男に妻を奪われそうです

序

世の中には「イケオジ小説コンテスト」なるものがあるらしい。
応募する予定はない。

ただ、国王と調停府長官がそれを知ってしまった。

背中で語り、生き様で魅せる、大人の男ならではの魅力を描くこと。
二万字以上六万字以下の中編ファンタジー小説であること。

男性主人公部門と女性主人公部門があること。

そして、生成AIの利用は、誤字脱字の確認、表現の調整、着想の整理など、 創作を支える補助的な範囲に限られること。
本文の執筆や、筋立ての主要部分を委ねてはならない。

募集要項に目を通したカシウス=グランメル国王はしばらく黙っていた。

隣では、ダリウス=ラ・リュミエール調停府長官が 同じ紙面を最初から読み直している。

「大人の男、か」

「陛下と同じ四十六歳の人物なら、主人公として十分に該当するかと」

「お前と同じ四十五歳でも同じだろう」

「年齢だけなら、そうでしょう」

「応募するとは言っておらぬ」

「私も、書くとは申しておりません」

二人の視線が再び募集要項へ落ちた。

ややあって、カシウスが生成AIの利用条件を定めた箇所へ指を置く。

「補助的な利用は認められている」

「そのようでございますね」

「では、筋立ての主要部分とはどこからだ」

ダリウスの目が止まった。

それが、すべての始まりだった。

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